脱サラコピーライターのほぼ日刊ブログ

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元大企業の営業戦略&数値分析担当のサラリーマンが二児の子供を養いながらコピーライターとして独立した頭の中を淡々と書く。マーケティングや心理学の事を中心に、たまに子育て話を書くブログ。

タクシーの運転手さんに大事な事を教えてもらった時の話

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僕はよく人に話しかける。

結構色々といいことがあるし、その人から学べる事が多いからだ。実際に、話を聞いただけで、美味しいトマトをもらったり、3店盛りの刺し身が4点盛りになったこともある。

特に話す事が多いのが

・飲食店の店員さん
・美容師さん
・タクシーの運転手さん

だ。

その中でも一番長い時間話すのがタクシーの運転手さん。会社からタクシーで帰るときは、首都高から6号っていうのがお決まりのルートだったんだけど、それで家まで大体1時間弱くらいかな。寝ちゃう時もあるけど大体運転手さんと話していた。

ある時は、6号に入ってすぐ前にランボルギーニが入ってきて、ずっとランボルギーニのテールランプを見ながら帰ったこともあった。多分アヴェンタドールだったと思う。特に好きなやつだったから、前に入ってきた瞬間「おお!ランボルギーニっすね!」って言ったら、「こんなこと今までやってきて初めてですよ!」って運転手さんも興奮してた。それで車の話で盛り上がったり。

ガチの元ロボットエンジニアの運転手さんに、今のロボット事情について教えてもらったりしたこともあった。電通で働いていた元カメラマンの運転手さんから内情を教えてもらったりもした。結構色んな人から、色々聞いた。

その中でも、今回は、家の近くでたまたま乗ったタクシーで、凄く心に響く言葉をもらった時の話。


子供がいる親はお金払ってもタクシー

子どもと一緒に出かけるようになると分かるけど、公共交通機関というのは、実は子連れにはそんなに優しい乗り物ではない。

最近ではベビーカーを折り畳むべきか?とかで消耗している人達がいるようだが、そんなんどうでもいい。むしろエレベーターやエスカレーターの整備が進み、優先席も設けられて配慮が随所に見られる。だけど、そもそも全て大人が使う前提で作られているっていうのが問題で、階段一段のぼるだけで、子供には一苦労だ。仕方ない事だとは思うけどね。

最新の設備が揃った最近できたばっかりの大きくてキレイな駅に行っても、一手間、二手間かけて移動する事に変わりはない。だから、費用が高くてもタクシーでの移動は本当に楽だ。荷物もトランクに入れてもらえるし、車内空間には運転手さん以外に人がいない。気を使う量が圧倒的に少なくて済む。なのでタクシーに乗る機会が増えてきていた。


それは免許の更新の日という日常

近場に更新できる所が無いから、警察署に行く必要があったわけだが、最寄りの駅からはかなり離れている。バスは出ているが循環型なのでちょっと余計に時間がかかる。何より、バスは電車より子連れに優しくない乗り物だ。狭いし揺れるし、段差が垂直方向に多く、子供だけでは乗り降りが困難だ。

僕個人の理由としては乗り物酔いし易い交通手段第一位がバスだ。あれだけデカい乗り物が、乗用車より全然ホールドされてない状態で同じようにブレーキ踏んだり、カーブ曲がったりしたらそりゃ体に負担かかるわっていう。ホントにバスって乗り心地悪いんだよね。地方でボーッとのるのは良いんだけど。

だからちょっとお金かかるけど、その日もタクシーで警察署に行くことにした。


安部譲二似のいかつい運転手さん

何気なく先頭のタクシーに乗り込む。ドライバーさんの写真を見ると、結構いかつい・・・。声も若干しゃがれていて、いかにも「一曲あります」的な雰囲気を醸し出す運転手さんだった。

最初の方の他愛もない話はよく覚えていないが、具志堅用高がお店をだして、失敗したとかそんな話になったのを覚えている。だから一時期テレビに沢山出ていたんだと。「借金返すために頑張ってたんですよ」とまるで業界人のように言っていた。そこで特別な感じでもなく普通に運転手さん自身の事を話し始めた。

「僕もね、ラーメン屋やってたんですよ」


人気ラーメン店の元店主

どうやらオーナーではなく、雇われの店主だったようだが、それでもかなりの人気店にまで登りつめたようだ。テレビの取材が来たりして、物凄く忙しく働いていたそう。

「ラーメン屋を人気店にするのはそんなに大変なことじゃないんですよ」

そう言っていた。

しかし、そんな人気店を切り盛りする店主だったが、店の人間が金を持ち逃げしていなくなり、お店も閉店に追い込まれ店主としては働けなくなったとのこと。で、稼がなきゃいけないから仕方なく、タクシー運転手になり、そのまま続けているのだと。

そして、この辺で有名な、看板を出してない知る人ぞ知る謎のラーメン屋の存在を教えてもらい、そこで警察署に到着した。

※このあと色々と調べた結果、この時のラーメン屋が全国食べログランキングの50位以内に入っている店だと分かった。訪問したら超絶美味くて感動した。


タクシーを使った後バスに乗るのは無理、からの偶然

警察署での用事を済ませ、さて帰ろうとなった時に、「バスは嫌だよね」と。しかも循環型で帰りの方が遠回りのはず。「リッチだね」とか奥さんに言われながらも警察署に貼ってある何枚かのタクシー会社の案内から適当に電話して配車を頼む。

10分しないくらいでタクシーが到着したら、なんとさっきと同じ運転手さんだった。同じ会社にかければ、同じ人が来る確率も高いだろうけど、別に選んでその会社にかけたわけじゃない。それか、裏で配車センターが繋がってるのか?詳しくは分からないけど、また安部譲二に乗せてもらったわけだ。


ラーメン屋の前は何をしていたの?安部譲二

ここまでの会話で、ラーメン屋⇒タクシードライバー、という経歴は分かっていた。だから「学校出てラーメン屋で修行してたんですか?」と聞いてみた。人気店を切り盛りしてたくらいだし、それなりに修行をして、お店も何年もやっていたのだろうと思っていた。だからラーメン屋あるあるとかが聞けるかなと。でも、完全に予想外の回答が返ってきた。

「実は、佐川マンだったんですよ」

佐川マン、今なら佐川男子と呼ぶようだが、気になった人はググッてみてほしい。「佐川男子」で調べたら、予想以上に香ばしい検索結果が出てくるはずだ。佐川の仕事はかなりキツイと噂には聞いていたが、この運転手さんも例外ではなかったようだ。


実は◯◯万円プレイヤーだった安部譲二

「もう、それこそ馬車馬のように働いてましたね、年収も1500万くらいもらってました

マジか。人口の5%以下しかいない希少人種、1000万円プレイヤー。その中でも中堅クラス。労働人口ならもうちょっと割合が増えると思うが、それでも年収ヒエラルキーの超上位層であることは間違いない。ただ、その稼ぎを追い求めるばかりにワークライフバランスが完全に崩れてしまっていたようだ。

「子供が生まれてからもっと忙しくなって、その時は奥さんに指一本触れなかったですからね」

奥さんに指一本触れないって。よく夢精とかしなかったな、って思ったけど言わないでおいた。隣に奥さんいたし。


稼ぎを追い求めた先にあったもの

心屋仁之助さんも同じような道を辿っていたと記憶しているが、家庭を顧みる事ができなかったようだ。

「奥さんが浮気しちゃってね。当然ですよね、子供を産んでるっていったって、まだまだ女性として盛りの時期ですよ。放っておかれたら寂しくもなりますよね。俺が悪かったんですよ、家庭と仕事のバランスを取ることができなくってね」

そして、奥さんに何も求める事なく離婚する事に。でもお子さんとは良い関係を保っていたようだ。

そして、娘さんが「結婚を考えている男性をお父さんに紹介したい」と言ってきた時の話になった。


強面だがおじいちゃんの安部譲二

 「娘の結婚には素直になれなくてね。『男が俺の年収超えたら結婚させてやる』って言ったら、『お父さんの年収超えられるわけないでしょ』なんて言われましたね」

「自分がこんな事言うと思っていなかったんですけどね。やっぱり父親ってこうなっちゃうんでしょうね」

「だってね、お前にくれてやるために娘を大切に育ててきたわけじゃねぇって、ついつい思っちゃうんですよ」

と言っていた。僕も娘がいるがこの気持はまだ理解できていない。今時点で「変な男は近づけないっ!」とか思ってない。全く想像がつかないし、なんなら自由に恋愛したら?くらいに思ってる。でも、最終的には「お前に父親と呼ばれる筋合いはない!!!」とか言い出すんだろうね。きっと。 

今はお孫さんも生まれて、仲良くやっているという。苦労した末に改めて家族を大事にして、そして仕事も元気にバリバリこなす。苦労した人が報われている姿を見るのはとても心が温まる。


もう一つの悲しい出来事

「子供さんは、男の子と女の子?良いよね。二人いると。 俺にも男の子がいたんだけど、事故で亡くしちゃってね」

こんなドラマが起きる人生を歩んだ人に出会えるものだろうか。この言葉にはなんて言っていいか分からなかった。

そういえば、前にも同じような出来事があった。

ハワイの絶景ポイントで娘を抱っこして景色を眺めていたら、「娘さん?可愛いわね!」と言ってくれた品の良い白人の女性がいた。旦那さんと二人でツアーに参加しているようで、他にも10組弱の人達がいた。その女性の胸元には20代くらいの若い女性の写真が入ったバッジが付いていた。

「あなたも娘さんがいらっしゃるんですか?」

 と僕は聞いた。海外の子育ての先輩として話ができたら、と思ったからだ。これもまた想像とは違う返事が返ってきた。

「ええ、でも亡くしてしまったの」

彼女の返事はそういう悲しい内容だった。感の良い人なら既に気付いていたかもしれないが、子供を失った親達が心を癒やすためのツアーだったのだ。

「すみません、なんと言ったら良いか・・・」

もうそれくらいしか言葉が出なかった。でも、彼女は微笑みながら言ってくれた。

「いいのよ、気にしないで。お子さんとの時間を大切にしてあげて


結晶化した言葉

話をタクシーの運転手さんに戻そう。彼の息子さんが事故で亡くなった、という話の辺りでちょうど駅に到着した。だからその話については詳しく聞けなかったし、聞くこともなかっただろう。

別れ際に彼が僕達に言ったのは、

「家族を大事にしてあげてよ」

という一言だった。 

こんなに心に響いて
こんなに素直に聞けて
こんなに行動しようと

思える言葉があるだろうか。

この日この運転手さんと話して本当に良かったと心から思った。

人生を何十年も生きた先輩は、人生から沢山の事を学んでいる。タクシーの運転手は雇われているものの、個人タクシーの道に進む人が多いし、元々個人事業主に近い扱いだ。そういう事を選ぶ人は、大体一曲ある人生を歩んでいる。普通のサラリーマンよりも人生からの学びが多い印象だ。

こういう人達の口からたまに出てくる、人生の経験を凝縮したような

結晶化した一言

を聞くのが好きだから、色々な人と話すのだと思う。


まとめ 

ブログを書いていたり、言葉を扱う人は、こういう事もネタの引き出しにしまっていったらいいと思う。タクシーに乗るなんて日常だし、同じお金を払うならその経験やサービスをしゃぶりつくした方が得だ。だから色んな人と話すべき。僕のように思わぬ得をする事もあるしね。

そして、そういう人が話す、人生経験から得られた教訓とか、エピソードをネタにしてほしい。コンテンツの質が上がるはずだし、そういう記事が増えてほしいと思う。

でも、もしタクシーあんまり乗らないとか、話すの苦手とかならこういう本があるのでオススメだ。

東京タクシードライバー(朝日文庫)

上記のドライバーさんよりも数奇な人生を歩んでいる人、もっと普通に思える人生を歩んでいる人、色んな運転手さんが10人出てくる。

有名なビジネス書や名作小説もいいが、そういう本に書いてない事が書いてある本だ。言ってしまえばただのおっさんドライバーの人生が淡々と描かれていると言っていい。

だから想像もつかない大企業のケーススタディも無ければ、ドラマティックな恋愛模様も出てこない。ただ、圧倒的なリアルがある。そのリアルに惹き込まれてしまう本だ。是非読んでみてほしい。