脱サラコピーライターのほぼ日刊ブログ

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元大企業の営業戦略&数値分析担当のサラリーマンが二児の子供を養いながらコピーライターとして独立した頭の中を淡々と書く。マーケティングや心理学の事を中心に、たまに子育て話を書くブログ。

【選挙】若者の投票率が低いから上げようって心理的にどうなの?

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間近に迫る参院選期日前投票も7月2日㈯ 8:30〜開始された。

で、この時期になると、というか選挙に関するトピックがあるときは、必ずと言っていいほど、

「若者の投票率を上げないと!」

という話になる。記事も増える。そういうのを読んで感じた違和感。

「その話の進め方だと投票率上がらないはずなんですけど」

投票率が低いというダメ出し

僕の不勉強かもしれないが、目に入ってくる若者の投票率の話といえば、

「若者の投票率は低い、だから国を変えたきゃ投票しに行け」
「若者の投票率は低い、だからお前らには文句言う資格なし」

というものが大半だった。言い方は多少違えど、この流れが一般的だと思う。グラフを見せたり、海外と比較したり。つまり、与えられた権利を行使しないからといって、ダメなやつら、という感じで一括りにされるわけだ。

こういうのを見ると、なんか投票に行かないやつは悪いやつ、悪いことをしてるやつで、しかも若者が特にそうだから、若者はダメなんだ。と言われているような気分になる。

カーネギーさんが言っていたこと

カーネギーさんだけじゃなくて、斎藤一人さんとか、有名な心理学者さんとかも言っているけども、共通してるのが

まず、ほめるという事。

人を動かすの中にある「人を変える9原則」には「ほめる」が2回も出てくる。9個しかないのに。相手の間違いを指摘して責める、なんていうのはもちろん入ってない。「遠回しに注意を与える」がギリギリ入っているけど、それでもインダイレクトにやろうぜという話。

1936年に初版が出てるから、「今の若者は・・・」とか通用しない。そのくらい昔、今より不自由でみんな根性あったと言われている時代ですらそうだった。しかも、大人同士のコミュニケーションでもこういう事が原則なっていたわけだ。

だから、若い子に限らず本当に気持ちよく能動的に動いてもらいたいなら、若者に限らずまずほめないと。

ネガティブから入る影響1:やる気無くなる

記事的にはインパクトがある。だから読まれるかもしれない。だからこそマズい。ネガティブから入ると人は態度を硬直させる。狙っての事かもしれないが、間接的かあるいは直接的に自分がダメ出しされてる感じになるだろう。

こんな流れの記事を見て、「よしっ!」投票行こう!」って思う人稀だろうな。投票既に行ってる人が「やっぱ俺偉い、俺違う」って頷くだけ。

現時点で既に選挙に行ってる人だけ満足させても意味が無い。選挙に行ってる人の意見は行ってる人にしか理解されないよ。特に必ず選挙に行ってる人の意見。「行くのが正しい」のスタンスからしか考えられないから。「別に行かなくても良いじゃん、義務じゃないし」っていう立場は理解できない。

で、こういうネガティブから入って鼓舞するような方法は、〜決起集会とか、デモとか、そういう一つの高い意識の元に集結した人達にやるべき手法。あとはスポーツとか。「お前たちの本気を見せてみろ!」みたいなね。共通の目標に向かっている仲間でもない、危機感もない人達に大勢動いてもらう為には賢い方法だとは思えない。

ネガティブから入る影響2:じゃあ自分も

「若者の投票率が低いんです!」という事を聞いて、一般の人はどう思うか?

「そんなに危機敵状況なのか・・・じゃあ俺だけでも投票に行こう!」

などとは思わない。いてもほんの一部。

「あ、みんな行ってないじゃん。じゃあ俺も寝てよう」

って思うはずだ。人間の心理的にはみんながやっている方に動く。それが法を犯すとかでない限りは、多数派になびく。あるいは自分と似た人の行動を参考にする。だから、投票率を上げたいなら、「みんなも行ってる感」をアピールすべきなはずだけど、そうなってない。基本的に「若者は選挙に行ってない」を前提に話す。

しかも、行かない方が短期的で個人的なメリットがある。「家で寝てられる」とか。

とてもおもしろい提案がなされている田村淳さんのインタビュー記事ですら、前提は「低い若者の投票率をどう上げるか」だ。

あとは、投票に行くことのメリットを全面に出すような言い方や見せ方が良いはずだけど、それもない。

まぁこれは難しいか。1票入れたからってダイレクトに自分の意見が採用されるわけではないし、お金もらえるわけでもないし。(投票済み券での割引とかはあるらしい)ジュース一本もらえないし。これは恐怖(行かない事のデメリット)を煽った方がいいのかな。

ちなみに投票済み券の割引っていうのはどういう仕組なんだろう?割引する側のメリットあるのか?

若者は忙しくて投票に行かない?

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東京都の選挙管理委員会が出した選挙に行かない理由。マルチアンサーなのでなんとも言えないが、とりあえず忙しいからという理由がずば抜けて多い。で、ネット投票とかシステム面が整備されて、「誰でも家から投票できますよ」となったとして投票率が上がるだろうか?

僕はそうは思わない。ここにある別の理由の率が上がるだけだと思う。例えば「新しいシステムのやりかたが分からなかった」とか。で、テレビでそのジャンルの権威みたいな人が出てきて「システムっていうのは導入しただけじゃダメで〜」とか話始めるんだろうなぁと。

この選択肢になかったけど、「めんどくさい」を入れたらダントツじゃないかな。その程度の理由でしかなくて、単純になんでも良いからアンケートの時は言い訳を探して無難で使いやすいやつを選ぶ感じだと思う。

本当に若者の投票率を上げたいのか?

よくよく考えると、現在の選挙システムにおいて、若者の投票率が上がって誰が得するんだろう?もしかしたら長い目で見れば「今」若い世代が今後得するかもしれない。でも、政治の実権を握っている人達は、若者の票なんて無くても大丈夫な盤石のジジババ基盤を持ってる人達。そういう実力者が果たして若者の投票率が上がって、どっちに転ぶか分からない状況を歓迎するだろうか?

実はとても賢い戦略かもしれない

若者の投票率が低い、というのは事実だろうし、みんな意識している。だから国や自治体としても、対応しなければならない。というのが一般市民向けの顔。国の政治や地方自治体の行政に影響を与える実力者向からは、若者の投票率が上がると困ると言われているかもしれない。同時にそれを達成するにはどうするか?

今の方針が正解

その場合、広くメディアを利用して

「若者は選挙に行かなくなっている!だから選挙に行こう!」
「若者の投票率は低い!国を変える為に立ち上がろう!」

と伝えるのが一番だ。対応している感も出るし、投票率の向上も見込めない。最高の方法だ。既得権益を持っているジジババ基盤の実力者はしばらく安泰だろう。

ちなみに、「25歳の若者が自殺した」とニュースが伝えるだけで同じような自殺が多発するのはよく知られていることだ。特に具体的な年齢、背格好が情報としてあるほど効果が大きい。

グラフで示して何歳〜何歳が選挙に行ってない。

なんて最高の情報じゃないか。選挙に行かせたくないなら。

だから若者の投票率は上がらない

というわけで、若者の投票率はしばらく上がらないと思う。

上がった事でメリットを享受できる人が少ない、または、享受できる人が実権を握ってない
若者自身が投票率を上げるメリット、モチベーションを感じられない

という状況っぽく見えるので。

投票率だけ上げてどうすんの?

万が一投票に行こう!っていう呼びかけが功を奏して、というか

「投票に行く=正義」みたいな人がウザいから

という理由で若者の投票率が上がったとして、その票は国政に良い影響を与えるか?って言ったらNOだと思う。

だから、僕は今の状況はむしろ歓迎するべきだと思う。若者がどうでもよい票をいたずらに投票せずにいてくれてるんだから。

任期が来たから、内閣の方針でとか、理由はどうあれ、今行ってる選挙は若者の大多数にとってどうでもいいものになっている、それを投票に行かない事で表現してくれている。もしこれが投票率だけ上がってしまったら、どうでも良い選挙のままシステムの腐敗に気づかずに使い続けることになる。

「ありがとう!若者が投票に行かない事で国に警鐘を鳴らしてくれている。若い人達のエネルギーを活かしきれていない我々は猛省し、選挙のありかたを変えていきたい」

とかなんとか言ってくれたらカッコいいのにな。「器デカい!」ってなると思う。

なので意味のある投票率アップをはかる為に

で、これで終わりだと意見もなんも無いので、飛躍しすぎなところも入るが投票率を上げる施策を考えてみた。

じわじわ編1:ほめる、とにかくほめる

何でもいいから、「若者の選挙に対する意識が高まってきている」という情報を流しまくる。そして、投票所に若者がきたら、「えらいね!」ってほめる。もう何でもいいからほめる。

若者に肯定的って意味のポジティブな情報、そして、みんなも行き始めてるよ!っていう情報。こういうのがもっと圧倒的に目に入るようになれば、上がってくるはずだ。あるいは、「日本の若者はここが良い、ここも良い、ここも凄い、こういう人が選挙に来てくれたら、更にカッコいい!」みたいな流れか。

じわじわ編2:人間味を出す

プライドとか捨てて、若者と同じところもあるんだよ、っていうところを政治に関わる人も見せてほしい。一時期麻生さんが秋葉原で絶大な人気を獲得したのもこれ。「なんだ!実は普通の人間じゃん」と気づかせるところからスタート。麻生さんなんて、超名門で英語ペラペラの生まれながらのエリート育ち。それでも若者に受け入れられる事ができるんだから、そういうのもっと参考にしたら良いと思う。

続く人が出るかと思ったら、全然いないんだよね。

石破さんの電車好きとか、谷垣さんの自転車、小沢さんのカメラ、そういうのもっと出していったらいいのにね。ああ、そういうの好きなんだって。やれ東大とか、何何を歴任したとか、雲の上過ぎてついていけないんだよね、そういう所だけだと。

加速編:偉い人を動かす

若い人が投票に行くと、いかに今の実力者にもメリットがあって、省庁の偉い人達にとっても旨味があるのか、という事を説明して、偉い人にバックアップしてもらう。じゃないと、まず誰も本気にならないでしょ。

「これから何かの拍子に若者の投票率が上がる可能性は充分にあります。もしこの票があなたではない候補者に流れたら・・・。なので、いまのうちに積極的に若者に接点をもつようにしましょう。」

とかなんとか恐怖を煽って、政治家がとりあえず選挙権を持った学生ともっと接点を持っていった方が良いだろうな。選挙来ないからいいや、じゃなくて。

って打ってて、もし講演しまくってたらどうしよう?って思ったけどググったらそんなに出てこなかった。お金取ったりしてるんかなぁ。最近は大企業の伝説的な経営者さんとか無償で話してくれたりするからなぁ。

ここで一番効果が出るのは、教育に選挙の内容をもっとつよく盛り込む事かな。

最近の授業でどの程度強く教えてるか分からないけど、僕は選挙のところで1票を投じるべきかどうか考えたことが無かった。何歳から選挙権が得られるか?というテストの答えを求めていただけだ。

一貫性を尊ぶ効果を使うなら、選挙に行くべきか?という事を議論させて、結論を書かせると違うと思うんだけどね。「選挙に行くべきだと思う」って一度でも書いていたら、それはどこかで後々の行動に影響するから。

もし「行くべきではない」ってなっても、明確に意思があって行かないならそれでもいいでしょう。こういうのもかなりデカい力を動かす必要を感じる。先生の政治思想を刷り込む事になりかねない、とか言われそうだし。だからやっぱり、偉い人に、「若い人が選挙に行く事で(偉い人が)得られるメリット」を提供しないといけないと思う。

爆速編:若い人の選挙権を一回奪う

「バカじゃないの?」
って言われそうだけど。でも、歴史が証明している通り、大規模なクーデターや暴動は元々持っていた自由が奪われたから起きる。有名なリーダーが現れるのは、自由が奪われた後の話。だから一度与えた自由を脅かせば老若男女全部動きだす。

ちなみに、その昔P&Gが、配り過ぎてて意味が無いクーポン券を止める為に

「クーポン券を止めて、その代わりいつもお安くします!」

とやったら、大クレーム、不買運動、苦情の殺到を引き起こした話も有名。これはクーポンの利用率が2%程度だったのに起きた話。だから大部分の人はクーポン有り無し関係無い。むしろ店に行って安いならその方が良い”はず”だった。

それでも自由が奪われるとこれだけ敏感に反応する。人は一度手にした自由は手放したくないのだ。

※この話について詳しく知りたければこちらを参照


だから、政治家として世紀の愚策と言われようとも、その後の若者の選挙への意識を高める事に賭けて、一旦若者から選挙権を取り上げるという政策(選挙権年齢引き上げ40歳とか)を実行する。そしたら一気に若年層が反発して立ち上がると思う。もちろん、失脚するし、かなり悪名高い政策になるだろうけど。

まとめ

現在の状況では若者の投票率は低いほうが自然

  • 若者の投票率の低さを強調し具体的に説明している状況
  • 投票率が上がる事のメリットを感じない
  • 「持ってる権利は行使すべき」という下地がない
  • 「選挙権」という自由を奪われる恐怖もない

という感じなので、投票にいかない若者が悪いというのも的外れで、投票率が低くても生活レベルが高いのは誇れる、というのも違うと思う。

担当者が30回くらい人を動かすを読んだらいいアイデアが浮かぶかもよ。